特集 眼科臨床の進歩Ⅰ
トラコーマの病原—主としてトラコーマ固定病毒を中心として
桐澤 長德
1
,
德田 久彌
1
1トラコーマ固定病毒研究班
pp.822-826
発行日 1952年11月15日
Published Date 1952/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201309
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恩師石原忍先生が學術振興會の委囑によりトラコーマ研究に着手されたのはちようど20年前の昭和8年であつた。その後10年間の共同研究者の成果は名著「トラコーマの病原」(昭和28年)に明かであるが「プロワツエク小體が病原體であろう」との結論に對しては強く反對した學者も少くなく,該小體は細胞の病的乃至人工的産物に過ぎないとの反論が學會毎にくり返されたことはわれわれの未だ耳新しい所である。一方北大越智氏を中心として,越智氏小體がトラコーマの病原に近い關係を有するとの研究が行われ,また,戰後,電子顯微鏡が實用に供されるに及び杉田,藤山,濱田氏等によつてトラコーマ組織からの電顯撮影像がいち早く提供されたのである。これらのトラコーマ探究の歴史は藤山氏の近著「トラコーマ病原」(昭和26年)中に要領よく記述されているからこゝには省略する。
一方トラコーマ病原を一種のバイラスならんと見なす見解も2,3の學者によつて抱かれて來たが,いずれも廣く認められるほどの實驗成績はなくて今日に至つているのである。
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