講座
日光と紫外線
川畑 愛義
1
1京都大学
pp.6-9
発行日 1955年4月10日
Published Date 1955/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200928
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1.農村に文化を,都市に自然を
その昔,人類がまだ照明の方法を知らなかつた頃には人々は太陽とともに起き太陽とともに寝るという自然的な生活をくり返していたに違いない.しかし,人智の進歩にしたがつて光りが自由に創製きれるようになるにしたがつて人類の社会生活はその様相を次第に変えつつある.夜間の照明が高度に進化するにしたがい,人によつては夜間動物的存在へ半ば移行しているものがある.とくに都会生活を営むものは,昼間の大部分を室内に閉じこもり,日光に浴する機会を失つてしまつている.こうして人々はさんさんと輝く日光や新鮮な空気から遠ざかり,いわば変態的不自然な生活に陥りつつある.
しかし,人体は幾千年の昔からその生理・解剖的本質を殆んど変化していない.したがつて急激な自然環境の変化に適応するのには幾多の困難と無理を生ずるわけである.人間がまだ光の子として太陽に親しんでいた頃は,近視だの,結核だの,くる病だの,壊血病,それから神経衰弱などはあまりなかつたのではなかろうか.いわゆる近代病と称するこれらのものは,人類が自然の恩惠に背反した罪で,自業自得ともいえよう.
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