講座
喘息
勝田 保男
1
1東京大学医学部物療内科
pp.7-13
発行日 1957年4月10日
Published Date 1957/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201380
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前おき
吾々医者が患者の訴えをきいている時,屡々"自分は喘息持ちである"という様な喘息という言葉を使つた訴えをきくが,よくきいてみると,発作性にせきや痰が出るとか,普段よくせきや痰があることを指しており,本当の喘息であることも多いが,慢性の肺結核や,慢性気管支炎や,気管支拡張症を見出すことも屡々である.しかし喘息とは,のどが"ゼーゼー"いつたり,"ヒユーヒユー"鳴つたりする喘鳴を伴なつて肺内への空気の出入の妨げられるために起る呼吸困難が,発作性又は持続的に起る症状を指すのである.喘息にはこの症状は心臓の働きの弱つた時に起る心臓性喘息や,尿毒症の時に来る尿毒症性喘息等もあるが,最も多く見られ,又典型的な喘息発作の症状を呈するのは現在その本態は尚充分明かになつているとは言えないが,一般にアレルギー性疾患に加えられている気管支喘息であつて,普通喘息といえばこの気管支喘息を指すのである.しかし,一口に喘息といつてもその起り方は様々で,治療に対する薬剤の効果も異ることがあり,原因も明かになつていない点も多いため,根治療法というよりは発作に対する対症療法が主となつている.このため発作が頻発したり持続する患者は食事も睡眠もとれず,呼吸困難になつて苦悶している様な悲惨なものであるが,発作を抑えようと色々努力しても軽快しない時には,患者と共に医者も苦しめられる"医者泣かせ"の病気なのである.
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