2頁の知識
癌の治療藥
田崎 勇三
1
1癌研病院
pp.24-26
発行日 1954年2月10日
Published Date 1954/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200681
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医学もこの一世紀,いや50年前と比べても大変な進歩を遂げていますが,まだまだ医学の力では治せない病気が沢山あります.それでもそういう病気が余り多くない珍らしい病気である限り社会的には問題になる事もなく医者の間でだけ論議されるに止まりますが,ここに問題となるのは癌です.御承知の通り癌は過去50年の間に驚く程の速さで増加して来て今では結核を追抜いて高い死亡率を示すようになりました.年々10万に近い人々が癌の爲に死んでゆくばかりか1年毎にその数は増加しております.つい近年迄は結核の爲に死ぬ人々が毎年何10万だといつて騒がれていましたが,今はそして之からも当分の間そのよりよい治療法が発見される迄癌は結核に代て増加の一途を辿り,社会的な問題として騒がれ続けるでしよう.人間の慾にはきりがありませんから癌は早期に発見して手術するとかラヂウムやレントゲン線をあてれば治るといつても尚内服薬か注射等で治れば之に越した事はないと思うのは人情です.
又実際手術や放射線の及ぶ範囲は自ら制限があつて,何処にもここにも使えるというわけには,その治療注が極めて高度に進んだとしてもゆかないと思われますので「癌の治療楽」は重大な課題です.昔からその研究には懸命な努力がされて来ました殊に戰後そうした薬剤が踵を接して現われて来ています.一寸考えた丈でも20位は挙げられるでしよう.
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