随想
いのちの価値
水川 きよ
1
1近畿保健婦專門学校
pp.47-48
発行日 1953年11月10日
Published Date 1953/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200633
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日々の相も変らぬ生活の中で,感じること希うことの,その日なりに異なりながら,さて思つたことを,素直に書き表わせないもどかしさを感じるのは,この「感想文」ひとつつづると云う私にとつては,最も苦手なことだけにあるのではないように思えるのです.ふりかえりみるに,高校を出て,大学か,就職か,お稽古事かの点にたたされた時,私は因習の花嫁修行や,大学よりも,高看への道を自分ではつきりと決定して進んだのであります.そうして,今でも自らの選んだコースがあやまりでなかつたことに,ささやかな誇りともつかぬものを,思いみることもあります.当時私は洗禮を受けたばかりであり,神父樣や,代母さまが信仰上の点からも,気遺つて下さつたりはげまして下さる中に,高看の学生生活へ足をふみ出しました.以来3年看護のみの勉強と実習をきりつめて学びながらそれだけで足れりとした生活は,ともかくも矛盾を感ずることなしに過ぎました.その間にも信仰上の問題としては,かたい壁につきあたり解決のとびらの開かれないまま,不信仰に近い年月が,高校生活と同じようなリズムで3年間私の上に流れたことも,今は素直に認めないわけにゆきません.現在,めぐまれて最後の学習に專門コースをはげんでいる私は,職業教育のみから受けとつて来た3年の歩みを反省し,学業と実習とのアンバランスをなくしたいと希つています.
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