世界の波
アシカの集う島
末松 滿
1
1朝日新聞
pp.44-45
発行日 1953年10月10日
Published Date 1953/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200612
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「日本海上のハレム」として,島根県竹島の実情が,凉味とエロ味を盛り合せて大阪朝日新聞の夏の読みものとなつたのは20年以上も昔の話だが,その竹島が近ごろに至り,社会面ならぬ政治面のニュースとして,しばしば新聞紙上に現われている.
ハレムとは申したが,竹島に君臨する男性と,これを取りまく女性の群れは,人間にはあらずしてアシカである.日本海の北辺から集い寄つた彼らが,竹島で繁殖の営みを遂げる有樣が,さながらハンムの宮殿に似ているというのだ.だが竹島を賑わすものはアシカに限り,島内に水が湧かないので人の子1匹すむことはできない.一周すると2キロほどある島が2つ向い合い,附近に点々と小島が散在するが,いずれも岩ばかりで,松の木すらも生えていないのが竹島である.
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