講座
無痛分娩
尾島 信夫
1
1慶応大学医学部
pp.10-13
発行日 1953年10月10日
Published Date 1953/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200604
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燈台下暗し
近頃中共から帰つた医師によつてあちらで行われている無痛分娩のことが新聞を通じて紹介されてから,にわかに無痛分娩ということが世人に注目され始めたようである。ジャーナリズムというものはおかしなもので,私達産科医が何年も無痛分娩で苦心し,産婦人科学会総会でも本年などは数多くの研究成績が発表されるほどになつているのだが,偶々帰還船から「無痛分娩」がもたらされると学界の批判もなしに大発見のように騒ぎ出す.しかも中国の無痛分娩はむしろ自然分娩と称して「所謂無痛分娩」と対照的立場にある—在来の本邦分娩に近い分娩取扱法なのであるから,「日本でも無痛分娩をやっているのでしようか?」と訊かれると一寸当惑せざるを得ない.
私の返事は「無痛分娩にも色々あります.簡単にできるものも,相当の人員,施設を要するものもあり,全く無痛になる程度から稍々痛みを軽くする程度迄その程度にも種々あります.純薬剤的,医学的のものから,非常に精神的なものもあり,日本でも各種の方法が試みられて段々に普及しつつあります」という分ったような分らぬようなことを返事する.
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