2頁の知識
無痛分娩問答
尾島 信夫
1
1慶應大學産婦人科
pp.33-34
発行日 1951年2月15日
Published Date 1951/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906805
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A「先日帝王切開術を見學しましたが産婦はエーテル麻醉によつて手術中全く苦痛を訴えませんでした。ああいうのが無痛分娩でしようか?」「いいえ。あれは産科手術中の麻醉であつて無痛分娩というのは自然産道から,産婦自身の娩出力によつて分娩しながら,しかも痛くないようにすることです。」B「しかし娩出力は腹壓と陣痛とからなると教えられましたが,陣痛なしで分娩出來るのでしようか?」
「では私から訊ねますが,陣痛とはなんでしようか?」C「分娩時に周期的に反復する痛みです」D「子宮が收縮する時に感じる痛みです」E「子宮が收縮しそしてそれを痛みと感じるのです」「私は少し異つた見方をしています。先ず子宮……といつても子宮體部の厚い筋層のところ……が收縮します。するとそれに連續した子宮下部(峡部ともいう)や子宮頸部が體部の方に牽引されて伸展します。また胎胞(卵膜をかぶつた羊水)や兒頭が子宮下部や頸管を丙方から壓迫します。そこで子宮下部や頸管は次第に擴がり伸びて遂に胎兒が通過する樣な軟産道を形成します。この樣に子宮體部におこつた收縮が,その結果として下方の部分を壓迫したり伸展したりするので,そこに痛みが生じます。また更に兒頭が骨盤出口に近づくと,骨盤底の筋肉や,腟や,會陰その他の軟部組織力壓追され伸展されるために疼痛を生じます。從つて子宮の收縮と痛み……産痛と呼んでいます……はEさんの云われた樣に,一體のものではありません。
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