世界の波
MSAとMSI
末松 滿
1
1朝日新聞東京本社
pp.44-45
発行日 1953年8月10日
Published Date 1953/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200576
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MSA--といえば近ごろ流行言葉のように,猫も杓子も口にするが,なにも今はじまつたものではない.私は去る4月,東京大学法文経3学部149人に対する試験問題として「MSAとは何であるか」と問うてみたところ,60名は白紙答案を提出した.書いた者でも「メデイカル・サイエンス・アソシエーシヨン(医学協会の)略称なり」のような傑作が少くなかつた.束京大学の,しかも時局に敏感な学部の学生にしてかくのごとし,一般人は推して知るべきものがあろう.恐らくは,MSAもUSAも,区別しなかつたような連中が,今ごろ仕たり顏に「MSAなど昔から知つていた」かのごとく振舞つているのだろう.だからこそ近ごろやかましいMSA論議が,危なつかしくて見ちやおられぬゆえんである.
まず「MSAの援助をアメリカからちようだいすれば,エサに食いついたダボハゼのように,鋭いカギにひつかかり,煮て食われるか,燒いて食われるか判つたもんじやない」と警戒する社会党系の論者に対し「MSA資金は有難や,もらえば日本は繁榮する」といつた資本家ならびにその代辨政治家諸公の歡迎論,いずれも国民の心をそそる言い方をするが立論の根拠について案外国民が知らされていない.
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