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増刊号 図説「胃と腸」画像診断用語集2022
病理
MSI(microsatellite instability)
MSI(microsatellite instability)
上杉 憲幸
1
,
菅井 有
1
1岩手医科大学医学部病理診断学講座
pp.715
発行日 2022年5月24日
Published Date 2022/5/24
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403202872
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MSI(microsatellite instability)はマイクロサテライト領域に生じる遺伝子異常である.マイクロサテライトは1〜5塩基程度の塩基配列を1ユニットとする単純な繰り返し配列であり,ゲノム上に50,000〜100,000個程度散在性に存在する.遺伝的には極めて不安定で,変異の好発領域としても知られている(hypermutational region).ミスマッチ修復(mismatch repair ; MMR)機構はミスマッチ修復遺伝子(hMLH1,hMSH2,hMSH6,hPMS2)産物と酵素群より構成される.DNA複製の際,マイクロサテライト領域では適切な数の塩基を取り込めない場合があり,一時的にIDL(insertion-deletion loop)が形成される.MMR機構が機能不全に陥るとIDLの修復が不可能となり,結果としてMSIが生じる1).
MSIを引き起こす代表的疾患は遺伝性非ポリポーシス性大腸癌(Lynch症候群)である.Lynch症候群ではhMSH2とhMLH1の変異が90%前後にみられ,原因遺伝子とされている.hMSH6とhPMS2の頻度は低いが,これに対して散発性MSI型大腸癌の原因はhMLH1のメチル化であることが多い.散発性MSI型大腸癌の頻度は5〜10%程度とされ,BRAF変異,CIMP(CpG islands methylation phenotype)やDNA diploidyが多い.
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