特集 図説 胃と腸用語集2012
病理
MSI(microsatellite instability)
菅井 有
1
1岩手医科大学医学部病理学講座分子診断病理学分野
pp.846
発行日 2012年5月24日
Published Date 2012/5/24
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403113415
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MSI(microsatellite instability)はマイクロサテライト領域に起きる遺伝子異常である1).マイクロサテライトは,1~5塩基程度の塩基配列を1ユニットとする単純な繰り返し配列のことを指す1)2).その繰り返しは,1塩基の繰り返し〔例えば(A)n〕や,2塩基の繰り返し〔(CA)n〕のことが多い.マイクロサテライトは,ゲノム上に50,000~100,000個程度散在性にみられるが,遺伝的には極めて不安定で,変異の好発領域としても知られている(hypermutational region)1)2).遺伝子内の存在部位としては,多くはnon-coding領域であるが,coding領域のこともある1)2).
MSIを引き起こす代表的疾患は遺伝性非腺腫性大腸癌〔HNPCC(hereditary nonpolyposis colorectal cancer),Lynch症候群〕である.Lynch症候群の原因遺伝子は,ミスマッチ修復遺伝子であることからMSIの原因遺伝子はミスマッチ修復遺伝子である.hMSH2とhMLH1の変異がHNPCC全体の約90%とされ,hMSH6とhPMS2の変異がみられる例はまれである1)2).MSIの実際例を示す(Fig. 1).
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