隨筆
白赤紫
北畠 八穗
pp.31-34
発行日 1953年6月10日
Published Date 1953/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200529
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三人の少女を目近に興深くみています。3人とも村娘です。アカマンマ,つゆ草,オオバコの花に,たとえたい3人です。
アカマンマとつゆ草は,山奥の中學校を同級で卒え,鎌倉へ女中にきている20の娘です。オオバコは高校2年生です。境遇は,オオバコが一番不幸です。しかし一番幸をつかむでしよう。オオバコは,母親の生い立ちから,異常なのです。オオバコの祖父が,貧乏村の若い衆の頃,漁夫に身賣りした北毎道の漁場で,賣女に生ましたのがオオバコの母です。郷村につれてもどれず,北海道へ移住した伯父の家へ頼むとも言えずおきざりにしてきました。郷村へもどつた若い衆の祖父は,すすめられるままに近村から嫁をもらいました。その家庭に4兒ができてから,北海道へおきざりにした娘がたずねてきました。家におきにくいので,すぐ東京へ女中に出しました。折角17になつて父をたずねたオオバコの母は,家にもおかれず東京へ出されて,心細くて誰かをたよりたかつたでしよう。東京には,こんな娘にたのもしげに見せる男はウジヤといます。オオバコの母は,オオバコを胎ると,外に生み所もなく父の家へかえりました。仕方なしオオバコだけを引うけた祖父は,オオバコの母を,嫁のきてもない手くせのわるいイクジナシのサカンに嫁けました。サカンは嫁ができて,生れ古郷の鎌倉へ戻りました。
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