私たちの本棚
望郷,紫のくに「カナン」—破断層—広河 隆一 著
長友 正澄
1
1国立長崎中央病院臨床検査科
pp.1140
発行日 1987年9月1日
Published Date 1987/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543204274
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「パレスチナ難民」「レバノン紛争」などといっても中東問題にはほとんど興味も関心もなく,ゆえに無知であった.ところが先日,ふと立ち寄った書店の新刊コーナーで,ぶ厚い一冊の本を手にした.『破断層』である.報道写真家・広河隆一の目がとらえた中東情勢を,写真だけでは表現し足りない多くの問題をテーマに書き下ろした長編小説であった.
今まで「パレスチナ問題」「イスラエル軍の難民大量虐殺事件」など多くを耳にしてきたが,まったく真意は理解できなかった.しかし,偶然手にした『破断層』を読み進むうち,それらの報道がパレスチナ問題のわずかな一面を伝えるにすぎないことを痛感させられた.『破断層』はフィクションの形をとっているが,語られている事実はすべて著者の見聞,体験に基づいている.
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