世界の波
離れゆく常夏の島
末松 満
pp.22-23
発行日 1952年12月10日
Published Date 1952/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200416
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冬の訪れ--寒さを愁える敗戦日本にも,常夏の島があつたことを御記憶であろうか。九州の南に連なる南西諸島と,伊豆七島から太平洋へ伸びる小笠原列島である。
だが講和条約第三条によると,北緯二十九度より南の島々は国際連合の信託統治制度の下に置く,と書いてある。したがつて日本領土だつた常夏の島々は,みんな信託統治とやらになつてしまう。信託統治とは一体なんであろう。こんどは国際連合憲章第七十七条をごらん願いたい。第二次世界大戦の結果,敵国から分離された地域が信託統治の対象となる,と書いてある。日本国から分離した以上もはや常夏の島々は我らの国ではない。沖繩はまずあきらめるとしても,東京都内の小笠原や,鹿児島県大島郡である奄美大島の住民が我らの同胞でなくなることを,悲しみなくして聞けるであろうか。
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