音楽入門
樂典(1)
山本 金雄
pp.62-64
発行日 1952年8月10日
Published Date 1952/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200346
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第二回目より具体的にお話してまいります。先づ音楽理論の中の楽典に就て,この事は職場の合唱団等に指導に行きますと,先生に歌つて貰つてそれをまねるなり,レコードをきいて憶えるのは出来るが,譜面が読めないから,楽典を教えて下さいとよく云われます。いわゆる西洋音楽が日本に渡来して有余年の現在では小学校,中学校,高等学校の音楽の授業以外では殆んど楽典を知るには本を読む以外勉強するととは出来ない状態で而もそれも一応授業を受けたという程度で直接音楽と結びついて体得したものでないと,学校を卒業すると忘れて了い,又楽典の本を読んで丸暗記してもそれは楽譜を見て歌つたり,彈いたり,曲を書く事が出来,音楽を深く分る為には何の役にも立たない。楽典と音楽とを結びつけて知るのでなければならない,楽典とは文法に比較する事が出来る。いくら英文法が分つても,英語の文章が,その文の底の意味が分らなくては,英文法を研究する価値がない。楽典もそれ單独でなく,音樂が演奏出来,音樂がきいて分る為の樂典でなくてはならない。それでは樂典とはどんなものであるか。先づ音樂にはリズムとメロディーとハーモニーの三要素があります。リズム(節奏)とは長さと強弱の関係で原始民族の音樂は殆んどリズムだけといつてよい位のもの(主に太鼓又は手拍子,足拍子等)で現在でも台湾の山の中の人喰人種と称する土人は未だにリズムだけといつてよい位の音樂しか行われていない。
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