講座 2頁の知識
赤痢菌の菌型
安齋 博
1
1北里研究所
pp.16-17
発行日 1952年7月10日
Published Date 1952/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200313
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明治28〜30年に関東地方に於て赤痢の大流行があつた際に,志賀潔先生は患者の糞便より分離した一細菌を病原菌としで報告した(1898)。この菌が今日の志賀菌又は赤痢本型菌と云われていうものである。ところが,それから2年後(1900)米国のフレキシナーがフイリツピンの赤痢調査中,彼も独立して赤痢の原因菌を発見した。この両者を比較研究してみると,種々似ているところもあるが,明に異つたところも少くない。その中最も特異とする点は,志賀菌は動物に対して毒性が強く,又腸管や神経を侵す体外毒素を産生するが,フレキシナーの分離菌には認められない。それで我国で分離された赤痢菌(志賀菌)と,フイリツピンで分離されたものとは異なるものであることがわかつた。当時は病原体の決定に関する所謂コツホの"三原則"が奉信きれて,"一疾病一病原体"の考がつよかつた。ところが赤痢患者から異つた二つの病原体が分離されることはおかしいので,我国の赤痢と,フイリツピンの赤痢とは異なつた疾病ではないかと考えられた。その後,(明治37年1905)駒込病院に於て二木博士が赤痢患者より分離した病原菌も,志賀菌とは異なり,むしろ,フレキシナーの分離した細菌に類似していることがわかつた。
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