講座 2頁の知識
結核の新藥
高部 益男
pp.20-21
発行日 1952年6月10日
Published Date 1952/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200293
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2月の下旬新薬現わると日刊紙がアメリカ電報を掲載したのが始りで患者も製薬会社もそして医者も大さわぎの渦中に巻込まれてしまつた。これと同じことが過去何回くりかえされたことであろう。古くはコツホのツベルクリンから新しくはドマツグのチビオンに至るまで。その度毎にわれわれは希望をかき立て次に来る絶望を忘れたのである。そしてわずかにストレプトマイシンが外科療法とともに結核治療の根本原則,大気安静栄養療法の補助的立場を守つているだけである。しかも結核菌は黙々として手強い相手のストレプトマイシンに抵抗性を獲得しながら人間の間に拡がつて行つているわけである。しかしわれわれは希望をもつ。いつかはこの世代から世代への努力が実を結ぶであろうと思い,少しでも有力な武器が発明されて広大な複雑な結核菌との斗いに役に立つてくれるからである。
今度紹介された新薬は,事新しい発明品ではない。ちようどスルフア剤に抗菌作用のあろことを知られる以前に合成されていたようにこの薬は1912年オーストリアの化学者M.マイエルとJ.マレーによつて合成されていたのである。それは,現在はビタミンB複合体の一部であるとわかつたニコチン酸の兄弟分にイソニコチン酸というものがある。それに手を加えてヒドラジソをつけたイソニコチン酸ヒドラジツドという簡単な化合物で,ラ・ロッシュ社から出されたものをリミフォン・スクイブ社からのをナイドラジッドという。
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