特集 公衆衞生に必要な新藥の知識
隨想
新藥ばやり
三堀 三郞
1
1東京都薬務部
pp.98-99
発行日 1954年6月15日
Published Date 1954/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201422
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だてやすいきようで薬を飲んだり注射したりする者も無かろうが,この頃のように新薬続出で新聞,雑誌,ネオン,ラジオ,テレビで,これでもかこれでもかと言わんばかりのどぎつい宣伝広告で圧力を加えられたんでは,医者もそうだが,病人にしたつて,何となく使つてみたくなるのも人情である。医者にしてみれば,手際よく治して患者に気をよくしてもらいたいし,病人にしてみれば,いち早くその恩恵に浴して,君ありやよく効くねお蔭ですつかり楽になつたよなどと,新物食いの誇りを持つてみたい気持ちもあるから,新薬がはでな広告でお目見得すると,医者も病人も一応は使つてみたくなるものである。こんな心理から,薬の世界にも何となく流行といつたようなことが成立してしまうのである。
藥の広告というものは,ほかのものの広告とはちがつて,薬事法でなんのかんのと制限をうけることになつている。医薬品適正広告基準といういかめしいものがきめられていて,始めに製造の許可をうける時に申し出た効能効果の外には,改めて,許可なしには勝手に効能効果を広告してはいけない。公認とか推せんとか書くことも許されない。なお品質,効能,効果に関しては最大級の形容詞を用いてはならないことになつている。この点は過信することによる危害の防止ということで,他の物品の広告にくらべて厳しい点である。多くの医薬品広告で違反事例の最も多いのはこの点である。
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