講座
医療社会制度の盲点—国民健康保険は重要である
松尾 友重
1
1国立大阪看護学院
pp.40-41
発行日 1952年6月10日
Published Date 1952/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200298
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我々の生活は通常衣食住に必要な経費によつて組立てられている。云い換えるとそれは消費生活とよばれているものである。我々はその消費生活を維持するために何等かの職業に就いて=普通に「労働」と呼ばれる。そこから收入を得て=「購買力」を得て生計を立てているのである。ところで,現実の状態では消費生活を維持するのに充分な購買力を得ているとは云えない。戦前の生計費において食費の占める割合は大体30%前後であつた。戦後は60%以上を示している。この割合の大小は貧富の差を示すものであり,70%以上ではハンガーラインと云はれていてとても正常な生活を造ることは出来ないのである。何故なら限られた枠の内での食費の膨脹は他の経費例えば衣服娯楽,教養,保健衞生等に関する費用を圧迫してそれら文化財の利用を不可能にするからである。だから憲法で保障されている「健康で文化的な最低限度の生活は現実の生活においてはとても満され得ないことが判るだるう。その上に以上のことは「就業の機会」を得ている人々について云えることであるが実際の就職の機会労働の機会はそんなに簡単にあるわけではない。国家経済は大体国民所得の総額の多少に比例するけれども上から見れば世界市場での競争や国際経済の影響は直ちに国内経済に影響をあたえて,国民所得をも規定する。
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