職場報告
あれもこれも矛盾!—公衆衞生の一斷面
牧 光代
pp.27-29
発行日 1950年12月15日
Published Date 1950/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200014
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「科學行政は難しい」これは或る縣の公衆保健課長が漏された感懷であるが,上の人にして然り,ましてそれが第一線ともなると,なお更のことである。日本再建の目標はなんといつても健康で明朗な文化國家を築き上げることであり,これはなにも憲法第二五條をまたなくてもよい,國民の常識であるが,現状はどうであろうか。先日私は檢診に行つた部落會議所の告知板に麗々しく張られた縣議會に呈出されたと言う本年度の縣豫算歳出圖表なるものに目を止めた。そのなかの保健衞生費はと見ると,仲々見當らない。やつと土木,教育,炎害復興費,縣廳費等のかたすみに申譯のような,全軆から見れば1%か,2%の乏しいその割當を發見することが出來た。自分の分野にだけ關心を持ち,それを主張することはいけないことだが,どうもこれではと,正直ぞつとするような寒心を覺えた。爲政者の家族が結核になつて初めて結核對策に政府が,地方廳が本腰をいれる。國會議員が,縣會議員の誰かが惡質の傳染病におかされ,または集團の赤痢か,中毒事件が發生して初めて公衆衞生,保健衞生の重要さが彼等に徹底する。豫防衞生というものが行政機構の中の一部分である限り,これは政治に待つべきものが多い。いくら第一線の技術者が地駄んだ踏んでもそれは甲斐なき徒勞に終るであろう。では一般民衆はどうであろうか? 試みに先日の参議員選擧を振返つてみよう。
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