主張
保健婦に期待するもの
pp.5
発行日 1950年12月15日
Published Date 1950/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200003
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保健婦という職名が日本に生れ,其の業務や資格條件に關する法令が出來てから10年。10年といえば短いようでも一昔,其の間に,數々の世相の變化はあり,めまぐるしく移り變つては來ましたが,或時はそれがむしろ保健婦の發達を促進させたかの感もあつたようでした。他の婦人の職業の,其の發達の過程と經過年限に比べて,長足の進歩をとげては來たものと思いますが,本當の歩み出しはこれからでしよう。保健婦の職業が,婦人の職業として正しく成長するために保健婦達は今後何を考え,どのように歩むべきでしようか?
従來,婦人が社會に出ることをよしとしなかつた日本の習慣では,婦人が職業をもつことは,經濟的な問題から發足していたものが多く,萬止むを得ず職業をもち,世間はこれを輕蔑し,本人は恥しく思い,卑屈な感情を抱いていました。他の一面は,趣味や,興味のために職業をもつた有閑的な存在でありました。何れもは,婦人の職業が正しくのびることを阻害したものだと思います。婦人の職業が今尚判然と確立し得ないのは,婦人自身其の職業に對して,眞摯な態度をとつていないためで,男子のそれの如き眞劍味に缺けている故であろうと考えられるのは間違いでしようか。それは,婦人が職業に對しての責任を感じていないからです。
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