連載 高齢化社会の福祉と医療を考える・12
「ねたきり老人」を考える[4]—介護状況における三者関係
木下 康仁
1
1立教大学社会学部
pp.804-807
発行日 1987年8月1日
Published Date 1987/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661923111
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“儀礼的関係”と“三者関係”
私たちはこれまで3回にわたって「ねたきり老人」について考えてきたのだが,今回は介護状況における三者関係という考え方について述べることにする.始めに,これまでの議論を簡単に要約しておこう.第1回目に「ねたきり老人」という言葉がなぜ問題なのかを分析し,この言葉が現在社会的に実体化していることの意味と,実体化していくメカニズムを明らかにした.
次には「ねたきり老人」を,意識はしっかりしているが身体移動の困難な老人と規定し,身体移動の問題をマクロな視点から考えた.すなわち,人間の身体移動の基準点を歩行においたとき,私たちの社会は一方で交通手段のすさまじい発達によって,高速・広域移動が日常的になっていく反面,他方では自立歩行は言うに及ばず,身体移動の困難となった老人を多数出現させており,このパラドキシカルな現象を身体移動の極大化と極小化という概念を提起しながら分析した.そして,極大化の原理を応用することによって,極小化に抗することが個々の老人のケアにおいても重要であると論じたのであった.
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