バイオエシックス・セミナー・2
プリーズ・レット・ミー・ダイ—ダックスさんの場合
木村 利人
1
1ジョージタウン大学ケネディ研究所アジア・バイオエシックス研究部
pp.221-224
発行日 1984年2月1日
Published Date 1984/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661923012
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1973年の7月,父親と2人で不動産会社を経営していたダックス・コワート(Dax Cowart)さんは,テキサス州ダラス郊外の土地調査のため車で家を出ました.目的地のすぐ近くで,どうしたことかエンジンの止まった車の始動スイッチを入れた.瞬間に大爆発するという悲惨な事故にあいました父親を失い,自らは大火傷を負い体の主な機能がほとんど回復不能なことに病院で気づいた時,ダックスさんの発した言葉は‘Please let me die!’(お願いですから死なせてください)だったのです.
後にこの事故は,近くのガスパイプラインからのガス漏れにエンジン始動の火花が引火したのが原因であることが判明しました.今月は,その事故から10年を経て昨年,直接私がこのダックスさんにお会いして,その当時の考えと現在の気持ちについて話し合ったことをもとにしながら,バイオエシックスの視座について論じてみたいと思います.
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