心病む人とともに 精神科病棟での日日・4
電話相談ボランティア
三宅 富貴子
1
1東春病院看護部
pp.442-443
発行日 1983年4月1日
Published Date 1983/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922924
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強迫神経症のAちゃん
18歳のAちゃんは激しい強迫神経症.自営業の両親と兄1人という家族のなかで,末っ子で一人娘のAちゃんはかなりわがままに育ったらしい.自分の思い通りにいかないと,その時かかわった看護者を呼び泣き叫ぶ.私も何度呼ばれたかわからない.病院食が食べられず,パンとコーヒー牛乳が毎日の食事.その渡し方にも,空袋の捨て方にも“決まり”があって,それから少しでもはずれようものならたちまち大声を出す.そのうちトイレへ行けなくなり,部屋の入口に便器を置いて用を足すようになったが,自分で片付けることはできない.
ある日尿を始末した後,その便器を元の位置に置くことで大騒ぎをした.片手に新聞(床に敷くためのもの),片手に便器を持って部屋に入ったのはよいが,その新聞の折り端を元の通りにそろえろ,と言う.しかも片手に便器を持ったまま,それを下に置くのもダメだという.もともと不器用な上にゴム手袋をはめている私は,とても彼女の要求通りにできない.仁王立ちで今にも流き叫ばんとしているAちゃんの前で私も必死.しかしいくらやり直してもどうにもならず,とうとう途中で放り出し昼食に出かけてしまったが,帰って来て,‘あれからずっと泣き叫んでいたよ’と聞き,こちらまで泣きたくなった.午後からまた同じことを繰り返して,どうにかおさまったが,私はその時安定剤を1錠服用した.もちろん,後にも先にもこんなことは一度きりである.Aちゃんも苫しかっただろうが,私も苦しかった.
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