NURSES' VIEW
‘安静度’を見つめる
藤原 宰江
1
1岡山県立短期大学
pp.385
発行日 1983年4月1日
Published Date 1983/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922913
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母子入院となった腎炎の5歳の男の子は型通り検査や処置が行われ‘床上安静’が言い渡された,入院当初は見慣れない病室風景や看護婦たちに目を奪われて,おとなしかった子も,数日のうちに挙動がおかしくなってくる.普通は3日目くらいから不穏行動が目立ち始め,まず母親に八つ当たりする.やがて願いかなわぬと知るや母親への攻撃は止まるところを知らず,ついには自虐的行為や看護ケアの拒否もし,手のつけられないような病床不安を示してくる.
小児病棟で働いたことのある人ならこれに類似した事例の幾つかを知っているはずである.‘安静’のひと言で子供がどれほど傷つくか,大げさな言い方をすれば,行動規制のために人格までもあやしくなってしまうような実例を私は際限なく見聞してきた.このような病棟へ出たりする度に私が思うのは厳しすぎる安静度に対する怒りと哀しみである.そしてそのような病棟に限って‘子供の成長・発達’が声高に叫ばれ,しかも医師や看護婦のガードはこの上もなく固い.子供はとても不幸である.
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