特集 回復意欲を失った人々への働きかけ
慢性分裂病者の‘無為’のなかに秘められたもの
松崎 澄子
1
1長野県立駒ケ根病院
pp.1118-1121
発行日 1982年10月1日
Published Date 1982/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922865
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慢性の分裂病者の看護において,対応の難しいもののひとつに,いわゆる‘無為’の患者さんたちがいる.動きが乏しく,終日ベッドの中にいる患者さん.病棟の中ではそれなりの動きはあっても,それ以上に生活の場を広げようとしない患者さんたち.彼らは10数年,あるいはそれ以上もこのような‘無為’の生活を送っている.私たちはそのような患者さんたちに対して,社会復帰を目標にして,あれこれと働きかけを行ってきている.受け持ち制をとって患者さんとの接触を多くしたり,レクリエーションや作業に誘ってみたりして,単調な生活に少しでも変化を与えようと,日常努力している.
しかし,私たちのこのような意図や努力にもかかわらず,彼らはなかなか動こうとしない.多少は私たちの誘いに乗ってくれるかにみえるが,それも受身的で,ある範囲内でのことである.すなわち多くの場合,私たちの意図や努力は何か空回りしている,どこかずれているという実感を抱かざるを得ない.
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