特別寄稿
―わたし流老い話―泣き言から居直りまで
べっしょ ちえこ
pp.310-313
発行日 2001年4月25日
Published Date 2001/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663902490
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6年ほど前に私は『老々辛苦』(看護の科学社)という小さな本を出しています.まだ六十代半ばでしかなかったのに,さかしらにも老いの何たるかについて述べたものだから,早速その報いがきて二,三のところから話をしてほしいと依頼がきた.困ったのは依頼の主旨がみんな老齢者や,また忍び寄る老いへの不安を抱えた予備軍を励ましてやってほしいというものだったことです.本の題名でも表明しているように,こっちもからっきし意気地のない人間だから,人様を励ますどころではない.タイトルの頭にわざわざ「弱虫の本」と副題をつけた位です.
私の弱虫ぶりといったらそれはひどいもので,老醜がこわい,死への恐れを人に知られるのが恥ずかしい,痛い苦しいからいっときでも逃れていたい.体の不調はしょっちゅうで,老年期に特有のものと腹を括ればいいのだろうけど,その都度うろたえ揺れ動き,はては医者のもとへと駆け込む.バッグの中にはあちこちの病院の診察券が束になって入っているし,引出しは各種の薬で満杯です.もちろん健康に害のあることはすべて止め,ためになることはせっせとやり続けている.
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