連載 高齢化社会の福祉と医療を考える・39
老いと性[3]—老女考
木下 康仁
1,2
1立教大学社会学部
2(財)日本老人福祉財団
pp.1130-1133
発行日 1989年11月1日
Published Date 1989/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922415
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◆近代化と老いの非性化
今回は,性のテーマとの関連で年老いた女性について考えてみたい.ここで試みようとする作業は,どちらにしても老いた人間のイメージと切り離せないので,性と老女に狭く限定するのではなく,老人イメージの問題と関連させながら考えていくことにする.
私はかねがね,かつての日本人は老いた人々について,現在の私たちよりもはるかに豊かなイメージを持っていたと思っている.翁や媼,爺や姥など死語になったり死語化しつつあるこれらの言葉を思い浮かべただけでも,これらがかつて何を意味していたのか興味をそそられる.年寄りという一般的な言葉もないわけではないのだが,老いた人間のイメージとなると基本的には男と女に分かれていたと考えられるし,それ故にこそイメージは人々の意識の中でリアリティを持ちえていたと言えるだろう.年老いた人間には男もいれば女もいるのだから,そんなことは当たり前ではないかと言われるとそれまでだが,そう言って片付けられる程単純ではなさそうである.
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