連載 高齢化社会の福祉と医療を考える・38
老いと性[2]—性が〈夫婦〉を越える時
木下 康仁
1,2
1(財)日本老人福祉財団
2立教大学社会学部
pp.1024-1027
発行日 1989年10月1日
Published Date 1989/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922389
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社会関係として制度化されている性
筆者は以前,老いと夫婦のテーマについてケアの問題と含めて,いくつかの視点から考察し2,3の新しい概念を提起した(本連載第28〜30回,Vol.52No.12〜Vol.53 No.2).ここでその内容を再述する余裕はないので,結論だけを要約しておこう.夫婦という関係は親子の関係と共に家族を構成する極めて重要な関係であり,時間的には,親子がタテの時間関係であるのに対し,夫婦はヨコ,つまり,同世代的関係と言える.
ところが,老いて衰えていく過程はどうしようもなく個的な現象であるため,夫婦の関係自体も解体化していかざるをえないのである.一般には,この問題はタテ軸を中心とした家族の枠内に自然吸収されていくため分かりにくいのであるが,現状においては家族自体が大きく変容しているため,老いと夫婦の問題を考えなくてはならなくなってきている.そして,夫婦関係にある老人にケアが必要となった時には,家族とか夫婦といった関係を当然の前提と考えるよりも,そうした関係を越えたおおらかな社会的関係の中でケアがなされることの重要性を指摘した.
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