特集 失禁看護に目を向けよう
尿失禁とは何か—原因から治療まで
西沢 理
1
1秋田大学医学部泌尿器科
pp.553-559
発行日 1989年6月1日
Published Date 1989/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922289
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はじめに
本邦におけるこれまでの尿失禁(無意識のうちに尿が漏れることと定義されている)に対する社会全体の関心は,絶対的に乏しい状態であったといえる.例えば,1987年10月1日で総人口の10.9%を占める1332万人にのぼる65歳以上の老年者の中で,約30%が尿失禁であると考えられるが,本人自体が尿失禁は体質あるいは老化に伴うもので,治療は難しいと考え,医療機関を訪れないでいたり,また,尿失禁を訴えて医療機関を受診しても,適切な処置を施されることがなく,放置される場合が多かったものと思われる.
しかし,米国においては,3650万人の在宅老人の30%,150万人の老人ホーム入所者中の50%に尿失禁が生じているが,尿失禁のある人のほぼ半数は医療機関を受診している.また,尿失禁に費やされている経費も1兆3596億円に及んでいる.現時点では,両国間における尿失禁に対する関心には大きな隔たりがあるが,今後,本邦においても,尿失禁に対する関心が高まり,尿失禁に対する治療を積極的に求める患者が多くなり,医療機関での尿失禁への対応も,変化せざるを得ない状況となることが予想される.
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