今月の主題 老人診療のポイント
治療および処置上の注意点
尿失禁
大井 好忠
pp.1350
発行日 1988年8月10日
Published Date 1988/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221789
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先天性神経因性膀胱から夜尿症を含めると,尿失禁の原因または病態は多岐にわたる.老年者における尿失禁では加齢による身体的要因だけでなく,脳・脊髄疾患,代謝性疾患,感染症,泌尿器科的疾患が原因となっていることが多い.従って尿失禁にだけ目を向けて対処するのではなく,原因疾患を正しく診断して,治療方針を決定することが大切である.
そのためには中枢神経系の検査,血液生化学検査,頭部CT像を含めたX線学的検査に加えて,尿水力学的検査(urodynamic examinatin)を施行して判定されるべきである.泌尿器科的一般検査を除外することは出来ない.正常排尿は膀胱と尿道の協調運動によりもたらされるので,当然尿失禁では膀胱排尿筋の過活動か尿道括約筋の収縮力低下が要因となることが多い.しかし前立腺肥大症などでは充満失禁(overflow incontinence)がみられる.尿管腟瘻・膀胱腟瘻でも常時尿失禁がある.老年者の代表的尿失禁について治療上の問題点を述べる.
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