連載 ワットさんのペーシェントロジィ[今,患者が主役の時代]・9
石の上にも10年
ワット 隆子
1
1あけぼの会
pp.1218-1221
発行日 1988年12月1日
Published Date 1988/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922157
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私はなぜ書くのだろう
1988年9月23日,今日は秋分の日,国を挙げての休息の日だというのに,私はこうして机に向かってせっせと原稿書きをしている.8月末までに届けるべきものを延ばし延ばしにしているので,休日返上と相成ったわけで,誰にも文句は言えない.書くということは楽ではない,といつも思う.私なんぞ,言いたい放題を言い放っている印象を与えるらしいが,どっこいそうではない.構想を練り,吟味して,活字になったあとの反応をある程度恐怖しながら,渋々とトンボ2B鉛筆を持ち原稿用紙を眺める.
すると,なぜかコーヒーがほしくなる.それでキッチンまで行き専用特大コーヒーマグにネスカフェインスタントを入れて机に戻る.次に,タバコに火をつける.コーヒーを飲むと一服欲しくなる.30年近く続いている悪癖だ.左手にタバコ,右手にトンボ鉛筆,目の前にコーヒーの香り,これで情景設定は完了,あとは書き始めるだけ.
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