◆特集 作業療法の治療的アプローチ
OT百景—リハビリテーションを問いながら
村上 重紀
1
1ふれあいの里老人リハビリテーションセンター
pp.35-39
発行日 1985年2月15日
Published Date 1985/2/15
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Ⅰ 「リハビリーテーション」の功罪
ホームの玄関前のロビーに老人たちやスタッフが集まっている。その半円の人垣に包まれるようにして車イスに乗っているKさんの表情は晴れがましい。いつもと違って髪はきれいにとかれ,些か派手な上衣を着て手にはOT室で自分で作ったマフラーを持っている。一人の老人が人垣の中から進み出てKさんにお別れの握手を求める。Kさんはいよいよ自分の家に帰るのである。
Kさんが特養ホームに入所して,併設されているリハビリーテーション施設へ通って来てから二年余りになる。「自分の身のまわりのことさえできるようになれば」と話す家族の言葉を知ってか知らずか,長い入院生活に疲れ果てていたKさんは大きなアクビをしながら,これから唯一の自分の棲家となるベッドの上でうつろな眼をあけていた。
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