研究と報告
水俣協立病院における在宅ケア—13年間の訪問看護実践より
上野 恵子
1
,
井本 美恵
1
1水俣協立病院
pp.686-691
発行日 1988年7月1日
Published Date 1988/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922036
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在宅ケアの経過
当院は水俣病の治療・研究を主目的として1974年1月開所した無床診療所に始まる.その当時の水俣病患者の多くは,水俣病は治らないとのあきらめ,また公害病としての政治的,社会的問題も絡まって,医療機関を転々としたり,遠のいたりする状況が見られた.また,中には重症で寝たきりの状態なのに,なかば医療より放置されたに等しい水俣病患者もいた.
そのような状況を見て所長の藤野は,開所と同時に水俣病多発地域を中心に往診を始めた.もちろん病状回復が望める患者,特に日常生活動作の改善が見込める患者には専門のリハビリセンターへの入院を勧めたが,ほとんどの患者からはこれまでと同様に自宅で療養したいとの意向が返ってきた.そこで私たち看護婦はそのような重症の水俣病患者を対象に寝たきりから坐位へ,日常生活の広がりを目指して訪問看護を始めた.
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