連載 水俣病から学ぶ・10
水俣は命の物語
緒方 正人
1
1漁師,水俣病患者
pp.777-783
発行日 2003年10月1日
Published Date 2003/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101013
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こんばんは.今,ご紹介いただきました緒方正人です.私のプロフィールをお話しいただきましたが(表),ここに書いてないこともありまして,かつては家出少年でした.この大まかな歩みを見ていただいても,水俣病事件に否応なく遭遇したといいますか,出会うべくして出会ったということを,自分の歩みを振り返って思い知らされます.これからお話ししますが,私自身もやはり大きな変化,転換というか,展開というか,そういうことがありました.
以前は「命のにぎわい」があった
生まれたのが1953年,戦争が終わって8年たって,日本でテレビ放送が始まったころです.これから日本が経済復興をし,高度経済成長へ向かっていく矢先だったと思います.生まれた所が水俣から直線距離でだいたい10kmちょっと,今ですと車で40分ぐらいの距離です.すぐ目の前が海で,家が建っている所も元々は海でした.岩場を私どもの言葉で「浜ん河原」と言いますが,そういう岩場を,戦前,親父が自分の力で埋め立てて,そこに家を建てて住んだわけです.そこに生まれ育って,現在もおります.
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