扉
脳外科から手術がなくなる日
能勢 忠男
1
1筑波大学臨床医学系脳神経外科
pp.481-482
発行日 1993年6月10日
Published Date 1993/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436900653
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私が脳神経外科を志して早や四分の一世紀が過ぎようとしている.入局した頃は術後の脳浮腫との戦いで主治医は病棟で不眠不休の連続であった.この頃ステロイドが広まり始め,この薬のおかげ(本当はどうかは定かでないが信じる者は救われた)で,窮地を救われた様に思われた.
その後,術野の照明用具であるクリニカライトに代わり手術用顕微鏡が導入され,術野も明るく,かつ拡大され手術が安全にかつ侵襲も極端に少ないものとなった.この手術顕微鏡の導入のおかげで術者も主治医も病棟での睡ずの番はめっきり減った.次に起こった新しい波,超音波手術機器やレーザーメスの導入は狭い術野での手術操作をより容易なものとし,かつ多くのモニタリングシステムの併用により,手術はますます安全性を増し,かつ熟練の士にのみ許された手術もより若い脳神経外科医に托されるようになって来た.今はこのInstrumental Surgeryという時代のまっただ中で脳神経外科医は手術の成果を競い合い,新しい術式の開発に余念がない.このような流れの中で近年,血管内手術や定位的放射線療法などの非観血的療法が臨床の途につきはじめた.これは脳神経外科から手術のなくなる日という新時代の黎明期の迎えを暗示させる.
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