癌患者の手記—私は前を向いて歩く たとえ声は奪われても・6
口からものが食べられる
吉見 之男
pp.706-708
発行日 1985年6月1日
Published Date 1985/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921118
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
食道開通式
術後2週間もたつとやっと人心地がつき,窓外の景色にも目がいくようになる.朝な夕なに訪れる鳥たちの姿にも思いなしか晴ればれとしたものを感じ,木々の梢もふくらんできたようだ.やっと遅い春がやってきた.
私の病気も今日(3月30日)は春を迎えた.待望の鼻へ入っていた管が取れたことだ.手術の日以来,鼻から食道を通り胃にまで入っていた管.唯一の食事取り入れ口.移植食道もOKという診断の結果,再度テストして抜く.長い間ご苦労さん.お陰で鼻孔の一部がすれて赤黄色く膿んでしまった.でもよかった.これで開通式がすみ,流動食から本格的な食事へと進んでゆく.
Copyright © 1985, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.