癌患者の手記—私は前を向いて歩く たとえ声は奪われても・1
癌宣告
吉見 之男
pp.106-108
発行日 1985年1月1日
Published Date 1985/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661920986
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青天の霞靂
「これは命取りの病気です.即入院手続きをしてください」と,診察を受けるや否や,開口一番言われた時は,全く思いもよらないことであり,正に青天の霹靂.一瞬,「ウーン,参った」と言ったきり絶句してしまった.それでもかろうじて「何という病気でしょう」と質問したら,「悪性の腫れ物です」との答えが返ってきた.
こんな診断が一発で出てくるとは,全く想像だにしていなかった.ハレモノ=腫瘍=癌であることは間違いない.私たちの常識からすると,癌であることを患者には通常知らせないし,分からないようにすると考えていたにもかかわらず,はっきりと「命取り」「悪性の腫れ物」と言われた.癌という言葉こそ使わないが,全く同意語であろう.
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