保健婦活動—こころに残るこの1例
死を宣告されたT君
高野 和枝
1
1千葉県佐倉保健所
pp.731
発行日 1992年10月15日
Published Date 1992/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900674
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T君の母親が保健所を訪ねてきたのは,彼が9回目の手術を東京の病院で受け,自宅に帰ってきた時であり,看病疲れですっかり憔悴しきった様子であった.「家族は4人で,製縫業を夫婦二人で細々とやっているが,長男は大学生でお金がかかるし,二男は手術や入退院の繰り返しで,ほとんど財産も使い果たしてしまった.二男の下半身は麻痺し,疼痛があるためほとんど寝たきりの状態で,褥瘡も日ごとに大きくなってきた.そんな二男を毎日看病していることがとてもつらい.いっそのこと親子心中しようかと思う」と言い,その場に泣き崩れてしまった.
T君の病名は松果体部胚芽腫・脊髄転移(多発).スポーツ万能な上,学力も優れ,有名進学校に入学し,これからという17歳の時の発病だった.
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