特集 呆けの老人と家族が求める地域看護—呆け老人をかかえる家族の会・千葉支部の活動を通して
家族の力と援助システムのあり方—Y氏の発病から死までの援助を通して考える
永田 久美子
1
1千葉大学看護学部基礎保健学教室
pp.1145-1151
発行日 1984年10月1日
Published Date 1984/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661920900
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はじめに
家族の一員である老人の呆けの発病は,家族にとって予期せぬ出来事であり,家族は,選択の余地もほとんどないまま介護を担う立場に置かれ,老人の健康問題の変化と共振しながら,長い介護の経過をたどることになる.その過程では様々な介護上の問題や生活上の問題も生じてくる.その中で家族は,少しでも良い介護を,そして少しでも安定した生活をと願いつつ,家族内部で介護を生み出し,同時に介護上の問題や生活上の問題を処理しようとする1).
一方,それらの問題対処が家族内で無理な時は外からの援助の導入を試みる.家族はこれらの問題に対処していくために,家族の持つ条件に規定されながらも,様々な‘家族の力’2)を引き出し再生していく.呆け老人を抱える家族に援助を行う際の基本姿勢は,起きている問題と‘家族の力’を統合的に点検し,‘家族の力’を核にして,その可能性を支持・発展させながら,介護家族の自立性を高めていくとともに,‘家族の力’の限界性を早期に発見し,それを補完代行することで介護や生活の維持を図ることにあると考えられる.
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