特集 乳がんと闘う—治療・再建・看護+ボランティア活動
あの時こんなことが知りたかった—乳がん体験者の質問に答えて
牧野 永城
1
,
吉井 良子
2
1聖路加国際病院外科
2聖路加国際病院外科病棟
pp.765-772
発行日 1984年7月1日
Published Date 1984/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661920818
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患者の疑問・不安にどう答えるか
患者の中には,病気に関することにかなり詳しい人がいてびっくりすることがある.特に乳がん患者については,手術の形跡が残ったり,後療法のいかんなどによっても,いくら隠しても,自分の病気が乳がんであったという事実を知る患者は,私の経験では,知らずにいる患者よりはるかに多いと思う.この度の特集の質問が,患者から集められたものを基盤にして作られていることからもわかるように,患者の中には,がんであるという事実以上に,その疾患の診断・治療上の医学的にかなり詳細なことまで知っていて,例えば患者からの質問とか患者の持つ不安などに対しても,決して中途半端な答えで間に合わせてはならないことを痛感する.
時代が進むとともに,この傾向は強まる一方だろう.隠すことが決して賢明でないという時代は,遠くないというより,既に来ている感じさえする.がんをひたすら隠すことに努めるよりも,かえって教えて,がんも治るのだということを教えて励ますことの方が重要な時代に既に入ってきているのかもしれないのである.がんといっても,特に乳がんは,実際上なかなか隠しておけるものではない.その意味では,治癒への勇気づけの方が,患者にとってむしろ救いになるのではないだろうか.そして乳がんの場合,‘治りますよ’という言葉は決して嘘ではないことの方が多い.
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