学生の広場
患者のその人らしさにふれて—せん妄状態患者とのかかわりを再構成して
鈴木 優子
1
1関東逓信病院付属高等看護学校
pp.554-559
発行日 1984年5月1日
Published Date 1984/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661920772
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はじめに
精神病者は‘狂っている’というイメージが強く,以前は高い塀によって社会と隔絶され,孤島のような狂院に閉じ込められていた時代もあった.しかし近年,精神病者も‘人間として理解し尊重すること’が強調され,私自身の学習体験上からも,それは当然であると思っていた.今回の精神科実習において,初めて精神の病を持つ人に接し,また保護室という特殊な環境においてずいぶん驚き戸惑った自分を見て,私の内に,精神病に対するある種の恐れや不安が潜在的にあると感じた.それでも,初めはとにかく自分の目で患者をとらえようと,できるだけ患者のそばに居るように努め,そうすることで恐れや不安が少し軽減したように思う.
そんな中で私は,思いもかけない患者の反応に驚かされる場面に何度か遭遇し,今まで自分が知らなかった患者の一面に気づかされたように思った.そこで,その場面の再構成による振り返りから,患者像を明らかにしようと思った.その結果,患者のいろいろな側面が少しずつ見えてきて,私の中の患者像,つまり‘その人らしさ’が広がりを持ったように思う.そして同時に患者にかかわっている自分自身についても,見つめ直し考える機会となり,視野が広がったように思う.
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