特集 老人看護—自立への受けとめ方のズレ
拒否と沈黙の中にあった老人が心を開く過程—患者の反応の真の意味を考える
藤原 順子
1
1岡山大学医学部付属病院外科病棟
pp.1243-1246
発行日 1983年11月1日
Published Date 1983/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919993
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はじめに
84歳という高齢で直腸癌・前立腺癌の治療中の患者,Y氏が家庭で寝たきりとなり,一搬状態が悪化したため,当外科病棟に入院した.Y氏は,入院当初から我々看護者の質問に答えず,清拭さえも拒否する態度がみられ,他人事のように終日沈黙していた.
Y氏をどのように援助するか,迷いと困惑の状態が少し続いたが,その過程の後我々の基本的態度を,Y氏から何か特別な情報を引き出すのではなく,拒否と沈黙を‘訴え(患者の気持ち)’としてとらえるようにした.また清拭を中心としたケアを続けるなかで,Y氏の本来もっていた人間らしさが回復してくるようになり,一般状態も落ち着き,拒否的な態度も和らいで,自分の手で果物を食べたり,自分の気持ちを表現するようにまでなった.
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