LIFE SCIENCE 生命科学のトピックス・9
未来に備える遺伝子
本庶 佑
1
1大阪大学医学部
pp.10-11
発行日 1983年1月1日
Published Date 1983/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919749
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人体の防衛機構としての免疫現象は100万種類を超える“抗体”の特異的な反応と多様性にある
我々の体の中には外界からの侵入に備える防御機構として,さまざまな装置が備わっているが,なかでも最も高度な仕組みは免疫現象であろう.免疫現象の中心的な担い手である抗体は,予想されるあらゆる侵入体に対して,それぞれ特異的に反応し得るほどの膨大な多様性を備えているように思われる.ある推計によれば,その種類はゆうに100万種類を超えるという.
いったい,なぜ,このように膨大な多様性を我々は発現することができるのであろうか.また,なぜ,それほど膨大な多様性が必要なのであろうか.このような抗体分子の中には,これまで自然界に存在したとは思えないような物質,例えば人工的に合成したハプテン,あるいは人工ポリペプチドのようなものに対して強く反応するものがある.したがって,このような抗体の種類は,外界からの侵入に適応する形で多くの種類が生まれてきたとは考えにくいのである.
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