LIFE SCIENCE 生命科学のトピックス・8
遺伝子病の診断と治療
本庶 佑
1
1大阪大学
pp.1330-1331
発行日 1982年12月1日
Published Date 1982/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919723
- 有料閲覧
- 文献概要
今後の医学の主要な問題は遺伝的背景をもった病気を診断・治療してゆくことである
近年の医学の進歩によって,非常に多くの病気が治療可能となった.今日,不治の病として残っている癌・心臓病・高血圧症といった病気は,いずれもなんらかの遺伝的背景をもつ病気である.また,明確に遺伝子に欠陥のある,いわゆる遺伝子病の場合は,その治療方法はまったく不可能に近いといっても言い過ぎではない.今後の医学の主要な問題は,このような遺伝的背景をもった病気をいかに診断し治療していくかということにかかっている,
遺伝子病の診断は,最近,ようやくわずかな光明を見いだしつつあるように思われる.この診断が可能になるためには,その病気の原因となる遺伝子がはっきりとつかまえられることが必要である,すでに地中海沿岸に非常に多いサラセミアと呼ばれる血色素(ヘモグロビン)異常症においては,ヘモグロビン遺伝子の欠陥であることがはっきりと示され,ヘモグロビン遺伝子のどのような異常によって,その病気が起こるかが非常に詳しく調べられている.このような場合には,その人の遺伝子,すなわちDNAを単離し,その構造を調べることによって,明確な診断が可能である.
Copyright © 1982, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.