ケースレポート 末期患者のケア
〈死の部屋〉から〈安らぎの部屋〉へ—個室移動を拒否した末期患者から考える
倉田 トシ子
1,2
1高津中央病院
2前東芝林間病院
pp.1139-1141
発行日 1981年10月1日
Published Date 1981/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919364
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
重症者にとって個室のイメージとは
‘死に部屋’とか‘死の部屋’などといった呼び方をすると,死の臭いの漂う暗い牢獄のような感じを与えてしまう.どの病院でも重症者を収容する個室が病棟の一隅にある.大部屋あるいは2人部屋と違って,同じ病室でありながら,この‘死の部屋’はいろいろな意味で患者を恐怖に陥れる部屋である.
ガンの宣告を受けている患者が重症になり,個室に移されると,患者は自分の死がすぐそこまでやってきたのかと絶望してしまう.手術や特別な治療を受けるために個室へ行く時には,それなりの不安はあっても,死に直接結びつけては考えない.大部屋から出る時,患者は同室者に‘暇乞い’をしながら,るいは個室までの廊下を移送されながら,‘もう2度とこの大部屋に帰ることはないだろう’と内心思っているかもしれない.それだけに,病状が悪化したため大部屋にいることが不都合になった患者を個室に移す行為は,慎重に慎重を重ねて行わなければならない.
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.