同人放談
私の部屋
藤森 速水
1
1大阪市立大学
pp.304-305
発行日 1964年4月10日
Published Date 1964/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203022
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私の日日のくらしのうちで,最もながくすごすところは,教室である。自分の家よりも教室のほうが時間的ばかりでなく生き甲斐のある仕事の場としてもふかい関係のあるところである。この教室の一隅にある私の部屋,かた苦るしい表現でいえば教授室は朝に私を迎え,夕にふたたび私を送り出してくれる大切なところである。
およそ教授室と名のつけられている部屋には,その規模や美しさに関してはピンからキリまである。私が知つているかぎりでは,西独ミユンヘン大学産婦人科のビッケンッハ教授の部屋は,おそらく世界でいちばん大きな教授室であろう。ミユンヘン大学の産婦人科学教室それ自体がすばらしく大きく,柱や床は大理石でつくられ,ことに第一産婦人科のビツケンバッハ教授(現独逸産婦人科学会会長)の部屋は最近,彼をおとずれた私に,彼自身自慢したほど,実に宏大である。しかし,装飾は割合にすくない。日本でもつとも立派な教授室は,かつて岡林先生が設計されて,昭和6年にでき上つた現在の京大産婦人科教室の教授室であろう。
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