ホスピス イギリスの末期医療の現場報告・7
D. ドイルとの対話[3]—患者の必要を満たすためのチームによる全人的ケア
柏木 哲夫
1
,
Derek Doyle
1淀川キリスト教病院精神神経科
pp.740-745
発行日 1980年7月1日
Published Date 1980/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919001
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ホスピスは国民のニーズと国民の寄付金で運営されている
柏木 ホスピスを始める場合の他の大きな問題は,経済的な問題です。日本とイギリスでは医療体制が随分違います。日本では,患者のほとんどが何らかの保険に加入しており,病院は投薬や注射や手術などの医療行為を患者に与え,患者と保険から収入を得て,経営を行っています.従って,もし日本でイギリスのようなホスピスを作ろうとする場合,ホスピスでは点滴や酸素吸入や手術やその他の積極的な医療行為がかなり少なくなるわけですから,日本においては急性の病気を治療する場合に比べて,かなり収入は減ります.また日本においては,イギリスのように寄付を仰ぐというようなことも,難しいのではないかと考えられます。日本の事情が詳しくおわかりにならなければ,助言することは難しいと思いますが,ホスピスの経済的な問題についてドクター・ドイルのお考えを聞かせてください.
ドイル 日本とイギリスで国情が違うということは確かでしょうが,本質的な問題はそう変わらないのではないかと思います。例えば,ロンドンのセント・クリストファー・ホスピスも患者の少額の献金から現在のような立派なものができたわけです.それにはもちろん,ドクター・シシリー・ソンダースという優秀な指導者がいたということが大きく関係していますが.
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