特集 患者の参加した死への援助—交流分析を用いての試み
〈考察〉‘望ましい死’をとげた人からの学び
白井 幸子
1
1国立療養所多磨全生園
pp.722-724
発行日 1980年7月1日
Published Date 1980/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918998
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治ゆの見込みのない病気で入院している患者においては,病気そのものとともに,社会的問題,あるいは,心理的問題が重要な位置を占めてくる.病気の前途に展望の持てないことが,患者に絶望感を与え,無数のストレスの原因となる.患者の不安な心理はやがて医療スタッフにも影響を与え,両者の間に緊張感が生まれる.
重症な慢性疾患入院患者の多い国立療養所東京病院でも長年にわたり,医療スタッフと患者間の人間関係が大きな問題となっていた。問題解決の方法を種々考え,試行錯誤を繰り返した後に,とりかかったことは,フロイドの精神分析の口語版と言われている‘交流分析’を学ぶことであった.1979年2月,3月と2回にわたり‘交流分析と患者心理についての研修会がもたれた.交流分析を知ることによって自分自身についての客観的理解を得,悩む患者の心を知る手がかりが得られた,と多くのスタッフは感じた。そこで6月より医師,看護婦,ケース・ワーカー等よりなる‘末期患者を理解するための交流分析研究会’が発足し,交流分析を学びながら,実際の事例を考え,患者さんの心を理解することによって,患者とスタッフ間のよりよいコミュニケーションを得ようと試みた.
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