死への看護・3
患者の必要を満たすためのチームアプローチ—ある卵巣癌患者の例を通して
柏木 哲夫
1
1淀川キリスト教病院精神神経科
pp.282-286
発行日 1977年3月1日
Published Date 1977/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918103
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はじめに
患者が自分の病気の診断名を知っているかいないかは別にしても,末期に近づくにつれて,ほとんどの患者は,もうだめなのではないだろうかという気持ちを持つというのが,私たちの‘死への看護チーム’のメンバーの印象です.しかし,その気持ちと同時に,ひょっとするとよくなるのではないかという希望も最後まで続くようです.
患者が,もうだめなのではなかろうかという気持を持ち始めた時に起こってくる共通の心理は‘あせり’です.このあせりは老齢の患者ではそれほど顕著ではありませんが,まだまだこの世において,し残したことが多くある比較的年齢の若い患者や,年はとっていても,自分の死後に予想される家族の問題などを持っている患者にとっては強く現れます.特に自分が生きている間に,どうしてもしておかねばならないことがある患者が,自分の死を自覚し始めた時には,この‘あせり’は特別に強くなります.そして‘あせり’は不安やいらつきを生みます.
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